Hiroshima Photography

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タイムスリップオタガールと青春デンデケデケデケと14の夜

「タイムスリップオタガール 25話 雨あがりに唄えば」佐々木陽子 COMICポラリス

荻上チキさんオススメ*1「タイムスリップオタガール」を拝読しました。単行本最新刊*2はクラスメートと合同誌を作って即売会に参加するストーリーです。この「祭典の日に向かって困難を乗り越えて行く」ハッピーな感じ。こちらもページを繰る手を止められない熱い感じ。「青春デンデケデケデケ*3」もこんな感じでかつては読んだなあと思い出しました。

また、荻上さんは「96年当時を主人公と同じく中高生で過ごした」とも*4。ぼくが「デンデケ」を手にとったのは高2のころ。主人公「ちっくん」の高校入学〜大学受験のお話ですので、親しみ深く読みました。ただ、ちっくんは昭和24年生まれ。ベンチャーズに端を発するエレキやGSのブーム世代。一方、昭和50年生まれのこちらはその息子の世代*5。1991年はイカ天バンドブームの死に水を取ったばかりです。

では、団塊ジュニアが活躍する作品って?

ぼくは勉強ができない

「時田秀美です。最初に言っとくけど、ぼくは勉強ができない」

-「ぼくは勉強ができない」山田詠美「新潮」1991年5月号 新潮社-

新潮の連載当時に呉市中央図書館*6で読みました。コミュニティーの固着観念を衝いていくストーリーからは、表題ほどの衝撃を受けなかったのですが、17歳秀美くんのモノローグにはトキメキいたものです。「雑音の順位」のセンテンスはルーズリーフに書き写したほど。齋藤孝さんではありませんが、これは声に出して読みたい日本語です。

夏の終わる気配を夜の空気に感じて、それを彼女に告げたくなったのだ。季節は、いつも暦を裏切り、名残りの尻っぽを落として行く。空気は秋でも、影は夏、そういうことに気付くと、ぼくは桃子さんに伝えたくてたまらなくなるのだ。夏の影法師を踏むような足取りで、ぼくは月夜の暁に、彼女の部屋をノックしに行くのだった。

-「雑音の順位」山田詠美「新潮」1991年9月号 新潮社-

文庫本になった96年以来ずっと新潮文庫の100冊に入っているとか。96年はタイムスリップオタガールの舞台です。VHSビデオデッキの現役ぶりに涙し、飛べ!イサミガンダムW*7を新聞テレビ欄にみつけて興奮する96年*8。この時点で初出から5年。当時中三だったうちの弟が持っていたのはポケベルだったかPHSだったか。それが令和の今はスマホに取って代わったわけです。文庫本よりも電子書籍が幅をきかせているやもしれません。

技術革新がもたらした環境の変化は、作品の印象を変えたのではないでしょうか。「環境の変化」それは例えば、これまで井戸端会議の程度で消えていた話がSNSで誰もが知ることになったり、選り好みができたりみたいなこと。世間の多様性を手元で触れたような気になると同時に、没交渉の相手もサジェスト機能で自動的に決められちゃってるみたいな。ただでさえずっと不況。311震災もずっと影を落としています。漠然と不安。ものさしが変わった瞬間をいくつか覚えている人生再設計第一世代はそんなことを思います。

ただ、夏から秋へ季節の変わり目を感じる夜は毎年迎えています。水分補給は命を守る行動として推奨される夏になった現在は、酷暑からの解放に以前にも増して敏感になってしまったわけですが。

ぼくらの七日間戦争

映画「ぼくらの七日間戦争*9」。1988年8月の公開当時宮沢りえさん中学3年生でしたが、劇中体操着のゼッケンには油性ペンで「1-1」。中1設定だったんですねえ!

宮沢りえさん*10TMネットワーク*11にいざなわれるままに映画をみました。中学生が秘密基地に立てこもって学校にノーをたたきつけるストーリー。中学生の味方然とした映画でしたが、反発心をもってエンドロールまで眺めたように思います。

引っかかったのは校則を振りかざす教師と抗う生徒の構図です。あまりにも分かりやすい対立軸。2019年の現在、つまり中学生の主人公「菊池英治」の父親役だった出門英さんの年齢*12に追いつきそうな今は、Amazonプライムビデオでパディントン*13に泣き笑いし、好きな映画はブレンダン・フレイザーが主演のもの*14男はつらいよの最新作が待ち遠しいなど、ようやく本分に気づきましたが、当時は13歳中学2年生です。「こんな単純なもんでナメんなよ」と宣う態度でしたので本当に中二病を発症していたのでしょう。自意識過剰と増大する性ホルモン分泌の相克です。

ブーイングしながらも決してソッポは向かないのが中二です。宗田理さんの原作は読みました。手にとった文庫本の表紙はティザーカットをつかったものでしたが、奥付きに記された初版発行の日付は昭和六十年四月十日。尾崎豊さんの「卒業」リリースと同じ1985年の原作ということ。

 

 

 

 

 

*1:TBSラジオ 荻上チキ Session-22、2019年11月8日放送。「本はイイぞ!と思えるマンガ3冊」ということで「本好きの下剋上」「タイムスリップオタガール」「部長が堕ちるマンガ」を推薦しておられました。

*2:5巻。2019年9月25日 初版第1刷発行。

*3:芦原すなお著。1991年7月15日 第105回 直木賞受賞。

*4:そうかあ、チキさんうちの弟と同い年だったのかあ。ラジオを通していつも気付きを与えてくださるので、年下って思ってないっすよね

*5:うちの父親は昭和22年生まれでやはり団塊の世代。レコードラックには「井上陽水・氷の世界」「小椋佳・彷徨」「浅川マキの世界」がありました。「デンデケ」後のニューミュージックですねえ。

*6:呉市中央3丁目。ちなみに呉三津田高校の図書室は文學界と群像が毎月入ってましたが、新潮は置いてなかったような? 誰が選んでたの?

*7:当時アニメを見ると言えば千田町3丁目のポパイで「めぞん一刻」をまとめてレンタルしてテレビデオで!という感じでしたので1996年のアニメ事情は守備範囲外です。この時点で放送終了から8年たった「二階堂くんが登場しないテレビアニメ版めぞん一刻」。なつかしい!千田町のポパイは21世紀に入る前に閉店し、跡にはクリーニング屋さんのチェーン店が入りました。2019年12月現在は新光クリーニング千田町店が営業しています。96年アニメで検索しますとエヴァンゲリオンが放送されてたんですね!全く存じ上げないまま翌年の「劇場版Air / まごころを、君に」公開にあわせて(…だったか「劇場版シト新生」の頃か)深夜の一挙テレビ再放送の録画テープを友人に見せてもらいました。ガンダムアムロとシャアの「宇宙世紀」が好きなので未だ「W」は見ないまま。08小隊はやはりポパイでレンタルしておもしろく見たんですが。

*8:タイムスリップオタガール 2話 懐古が私にやって来た(物理)

*9:同時上映は「花のあすか組!」つみきみほさんが演じた九楽あすかも実は中学2年生。メガホンをとったのは崔洋一監督。「帝都物語」のロケセットが流用されたとか。小高恵美さん主演のテレビ版を覚えてらっしゃる方のほうが多いかも?

*10:宮沢りえさんと後藤久美子さんは同学年。「ママはアイドル」「同級生は13歳」などでおなじみのゴクミでしたが、常についてまわる国民的美少女の看板がじゃまだったんですかねえ。大人に押しつけられた感=商売って感じで人気いまいちだったんですよねえ。

*11:主題歌「SEVEN DAYS WAR」。ロンドンからの衛星中継で出演したのはたぶんザ・ベストテン。映画ロケセットで歌ったのはザ・ベストテン? 夜ヒット? サントラ盤も買いました! シーンとのシンクロは微妙だったけど。

*12:出門英。ご存知ヒデとロザンナのヒデ。昭和17年12月15日 東京府出身。劇場公開時の昭和63年8月は45歳。

*13:パディントン Paddington 日本公開2016年。ヒュー・グラントがまぬけな悪役と言うか三枚目役の2作目 Paddington 2 も良いのですが、ダウントン・アビー Downton Abbey の伯爵 ヒュー・ボネヴィル Hugh Bonneville 大活躍の1作目が好きです。古田新太さんの吹替版が好きです。ニコール・キッドマン Nicole Kidman にも注目!

*14:ハムナプトラとかハムナプトラ2とかハムナプトラ3とか。ハムナプトラ 失われた砂漠の都 The Mummy 1999年。ハムナプトラ2 黄金のピラミッド The Mummy Returns 2001年。ハムナプトラ3 The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor 2008年。センター・オブ・ジ・アース Journey to the Center of the Earth 2008年。センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島 Journey2: The Mysterious Island 2012年。悪いことしましョ! Bedazzled 2000年。